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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SACRED REICH : AWAKENING】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH PHIL RIND OF SACRED REICH !!

“Slayer And Metallica Have Always Been Our Main Musical Influences. I Think They Are Two Of The All-Time Great Metal Bands. The Success The Metallica Has Had Is Mind Blowing!”

DISC REVIEW “AWAKENING”

「SLAYER と METALLICA はいつだって俺らにとってメインの音楽的影響だったね。彼らは全時代のメタルバンドの中でも最も偉大な2つのバンドだと思う。」
オールドスラッシュ復権の年。POSSESSED や DEATH ANGEL, FLOTSAM AND JETSAM, OVERKILL が圧倒的な作品で先陣を切り、EXHORDER, HEATHEN, DARK ANGEL といった古豪の帰還も控える今年のスラッシュワールドは間違いなく高まる期待感と熱情に支配されています。”伝説” と呼ばれたカルトなヒーローたちの同時多発的再臨は、再び押し寄せる鋭利な波の震源地となっているのです。
興味深いことに、永遠の氷河が溶け出すように長い眠りから目覚めたスラッシュの魂は、大半が SLAYER や METALLICA の血脈を直に受け継いだ “第2世代” の英傑でした。中でも、最も復活作が期待されたバンドの一つが SACRED REICH だと言えるでしょう。
80年代初頭から中頃にかけて、アリゾナで “第1世代” の太陽を全身に浴びたヤングガンズは、しかし先達の真似事に終わらない独自の道を模索します。アグレッシブかつダークなデビューフル “Ignorance” からすでに、ベイエリアとは一線を画すハードコアな一面を垣間見せていた彼らは、南米におけるアメリカ帝国主義を痛烈に皮肉った EP “Surf Nicaragua” でその政治性を開花させます。時代の変遷と共に、音楽的にもファンクやグルーヴの領域まで探求した彼らは、以降一貫してその政治的風刺、アメリカンドリームのダークサイドを描き続けたのです。
2000年の活動休止、2006年のリユニオンを経て、MACHINE HEAD を離脱したオリジナルドラマー Dave McClain を加えた SACRED REICH は不死鳥のスピリットで実に23年ぶりとなる復活作 “Awakening” を世に送り出しました。ニカラグアでの波乗りは、30年の時を超えメタルの津波となってリスナーへと襲いかかります。
オープナー “Awakening” で Wiley Arnett のクラッシックかつ独特なシュレッドとリフパンチの少し奇妙な応酬が繰り広げられると世界は SACRED REICH の帰還を確信します。ただし、同時に23年の時が刻んだ変化と進化の証も感じられるはずです。
「大半はポジティブで励ますようなアルバムなんだ。」ボーカル/ベースを兼任し、SACRED REICH の推進力とも言える Phil Rind は、アートワークやレノンへの愛が示すように、長い空白の間チベット仏教に心酔しスピリチュアルな世界の見方を身につけました。憎しみを捨て去り前へと進む断捨離の心は、時に ANTHRAX の Joey Belladonna を想起させるほどメロディックに歌い上げる新たな武装を Phil へと施し、以前よりも飛躍的にワイドなパフォーマンスをその身に宿すこととなったのです。
吐き捨てる叫けびと伸びやかな歌唱のコントラストが際立つ “Divide & Conquer” はその新武装が最も輝く瞬間でしょう。さらに IRON MAIDEN の誇り高きツインリードを受け継いだエピック “Salvation”、スラッシュアタック “Manifest Reality”、バンドの軌跡である PANTERA のグルーヴをモダンに昇華した “Death Valley”、ハードコアパンクとの架け橋 “Revolution” などアルバムは “メタルの領域” において Phil の言葉通り成熟を遂げ実にバラエティーに富んでいます。
もちろん、デビューフルほどの無鉄砲な突進力やエナジーは存在しませんが、きっと同様に年齢を重ね成熟を遂げたリスナーにとって居心地の良い恐怖を運ぶレコードではあるはずです。何より、ここには Phil が最も憧れる METALLICA と同種の耳に絡みつく “危険な” フックが溢れているのですから。併せて百戦錬磨、Dave McClain の華麗なタム回しが作品に素晴らしきアクセントをもたらしていることも付け加えておきましょう。
今回弊誌では Phil Rind にインタビューを行うことが出来ました。「俺は今こそ音楽にとって偉大な時だと思っているし、生きるのに最良の時代さ。」 新鋭 IRON REGAN とのスプリットも躍動感がありましたね。どうぞ!!

SACRED REICH “AWAKENING” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【POSSESSED : REVELATIONS OF OBLIVION】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH EMILIO MARQUEZ OF POSSESSED !!

“Seven Churches” Was The Creation Of Death Metal In My Opinion. There Was Never a Band Who Used The Words “DEATH METAL” In Any Song Title Or Claiming That Category When “Seven Churches” Was Released. “Seven Churches” Was Very Raw And Wierd In Structure And Lyrics. Just So Dark For Its Time. Very Unique!”

DISC REVIEW “REVELATIONS OF OBLIVION”

先日、かの Rick Rubin が SLAYER をしてブラックメタルの創案者と呼んだように、ジャンルの朝未きはいつも朧げで、故にそのミステリアスなアルカイックパズルの最適解は常に議論の的となってきました。
1983年に降誕した POSSESSED は “ゴッドファーザー・オブ・デスメタル” の称号を贈られる邪悪の根源。85年にリリースしたデビュー作 “Seven Churches” が、DEATH の “Scream Bloody Gore” をはじめ CANNIBAL CORPSE, DEICIDE, OBITUARY, MORBID ANGEL といったフロリダの魑魅魍魎に少なからず影響を与えたことは想像に難くありません。
実際、今は亡き Chuck Schuldiner は、DEATH の前身バンド MANTAS が当初 VENOM/MOTORHEAD 的な方向性を志向していながら、POSSESSED の登場で全てが変わったことを認めています。
「POSSESSED は当時登場したどんなバンドとも異なっていた。その音楽は純粋なノイズではなく、様々な要素、アイデアを作曲に取り入れていたんだ。彼らの進化は、他のバンドの挑戦や拡大の下敷きとなったんだよ。」
しかし、例え楽曲やデモのタイトルに “デスメタル” の文言を掲げようとも、”Seven Churches” の音楽性は決してデスメタルの完璧な “模範解答” であった訳ではありません。むしろ、スラッシュメタルとデスメタルのダークな架け橋との評価が一般的だと言えるかも知れませんね。ただし、POSSESSED の理念は完璧なまでにデスメタルでした。
「スラッシュはクリーンボーカルで歌われる生々しくファストな音楽だ。決して難しいソングライティングのスタイルではないよ。ブラックメタルも好きだけど、限られた少しのバンドだけだ。なぜならブラックメタルバンドの大半は、サタニックでさえなく、トレンドに追従しているだけだからね。デスメタルはもっともっとチャレンジングな音楽だよ。そしてコンセプチュアルでもある。バラエティー豊かだしね。」
新生 POSSESSED の栄誉あるドラマー職に任命された Emilio Marquez は、ジャンルの交差点に対して鋭い観察眼を発揮します。
確かに、クロスオーバーの禁忌を発動せずとも、デスメタルはスラッシュやブラックメタルと比較してより猟奇でカオスで挑戦的なジャンルであるように思えます。そして、その美学を主導したバンドこそ POSSESSED だったのです。
新生。そう、POSSESSED は不死鳥の如く蘇ったバンドです。後に BLIND ILLUSION, そして PRIMUS を結成する Joe Satriani が一番弟子 Larry LaLonde の絶妙に捻くれ絶妙に知的なギターワークを軸に据え、今では心理学の学位を取得しカウンセラーとなった Mike Sus の奔放で奇々怪界なドラムダンス、Jeff Becerra の狂猛なる咆哮を三位一体の阿鼻叫喚とした10代の POSSESSED は、さながら奇想画のごとくジャンルの脱俗と自我意識を備えた異端でした。
2枚のアルバムと1枚のEPを遺して解散したバンドの復活は2007年。トリビュートアルバムから実現した再起のオリジナルメンバーは Jeff Becerra のみでしたが、それでも車椅子の Jeff が牽引するパフォーマンスはファンの熱狂を呼びました。
そして、それから12年の後に届けられた最新作 “Revelations of Oblivion” には、Emilio の言葉を借りれば “POSSESSED のレガシーをしっかりと受け継いだ” ネクストレベルの無慈悲な倒錯が封じられていたのです。
“Seven Churches” と同様に荘厳な SE で幕を開ける伏魔殿には、確かにあの POSSESSED の背徳が投影されています。GRUESOME や ex-DRAGONLORD でならすシュレッダーをリクルートした効果は絶大で、当時のリフの迷宮はドラマ性とエキサイトメントを充填し迫ります。
もちろんチープだったプロダクションも大きく改善され、Emilio の正確無比なドラムアタックは Sus の異様を懐かしむ暇さえ与えませんし、何より Jeff の鬼気はその迫真を増しています。
特に、スラッシュの疾風とデスメタルの迅雷を共存させた “Demon” の刻々と移りゆくペースチェンジの妙、”Abandoned” や “Shadowcult” の絶妙に捻くれながらもギターハーモニーまで披露するリフドラマは、アップデートされた POSSESSED 2.0 の脅威を見せつけるに充分の攻撃でしょう。
今回弊誌では、Emilio Marquez にインタビューを行うことが出来ました。「僕の考えでは、”Seven Churches” こそがデスメタルを創造したと思うね。実に生々しく、構成や歌詞も風変わりだったよね。あの時代にしてはただ本当にダークだった。とてもユニークだよ!」 偶然にも、近年の KREATOR と非常に近い場所へと着地した可能性もありますね。どうぞ!!

POSSESSED “REVELATIONS OF OBLIVION” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ALIEN WEAPONRY : Tū】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ALIEN WEAPONRY !!

“I Think Our Views On Colonization Are Pretty Clear. For Example, Raupatu Is About Massive Land Confiscations. The Colonial Government In New Zealand (And In Many Other Countries) Did a Lot Of Unjust Things, And The Result Still Affects Our Society Today.”

DISC REVIEW “Tū”

「僕たちは、メタルの聖火を未来に向けてずっと掲げ続けることが出来ればと願っているんだ。そして、その炎はオリジナルのメタルバンドたちと、世界中のファンに向けたリスペクトから生まれているんだよ。」脈々と継承されるメタルのスピリット。ニュージーランドのヤングガンズ ALIEN WEAPONRY は、受け継ぐ燈火を一際高々と世界へ向けて掲げます。
Lewis de Jong (ギター/ボーカル), Henry de Jong (ドラムス) の De Jong 兄弟が8歳と10歳の若さで結成した ALIEN WEAPONRY。Ethan Trembath (ベース) を加えて16歳が2人と18歳の高校世代トリオとなった彼らは、Napalm Records からリリースした超高校級のデビューフル “Tū” で文字通り世界を震撼させました。
実際、古のスラッシュの波動から、Nu-metal のグルーヴ、洗練されたモダンメタルの息吹き、理知的でプログレッシブなデザインにピュアなメタルのメロディーまで、ワイドな視点で綴られたアルバムの中でも、自らの背景であるマオリの文化を投影する試みはあまりにユニークで独創的です。
誇り高きマオリ、Ngati Pikiāo と Ngati Raukawa 族の血を引く De Jong 兄弟は、1864年に1.700人の英国兵に230人で対抗しその命を投げ打った伝説の戦士 Te Ahoaho の子孫にあたります。そしてその勇敢なる遺伝子は克明に若きメタルウォーリアーズの中にも刻まれているのです。
「植民地化についての僕たちの見解は実に明快だよ。ニュージーランドの植民地政府は (他の植民地政府も同様だけど) 多くの不当な行為を行ったね。そしてそのツケは、今の僕たちの社会にまで及んでいるんだ。」と語る De Jong 兄弟。マオリ語で “神々の闘い” をタイトルに冠したアルバムで、彼らは当時の列強諸国が行った不当な搾取を告発し、メタルのジャスティスで断罪していきます。
何より誇りを重んじるマオリの民は、現在でもイギリス、西欧に踏み躙られた一族の尊厳を、”Whakamā” “深い恥” の言葉とともにトラウマとして引きずっています。故に、例えメタルに惹かれたとしても、その気持ちを一族の中で明かすことは今でも簡単ではありません。だからこそ、ALIEN WEAPONRY はマオリとメタルを繋ぐ架け橋を目指しているのです。
事実、マオリの言葉 “Te Reo Māori” をフィーチャーしたトライバルなイントロダクション “Waikōrero”、そしてアイコニックなワーダンス “Haka” を前面に押し出した “Rū Ana Te Whenua” はアルバムのスピリットを決定づけています。
もちろん、ALIEN WEAPONRY の方がより多様でコンテンポラリー、時に LAMB OF GOD, GOJIRA をも想起させるほど理知的ですが、メタルのヘヴィーグルーヴに民族の血やリズムを沈めるという意味では SEPULTURA や SOULFLY との比較が多数を占めるのも頷けますね。
「マオリの言葉はニュージーランドでも日常生活で幅広く使われている訳じゃないからね。だから習得の努力を続けるのは簡単ではないよ。逆に言えば、”Te Reo Maori” で歌うこともあの言葉と繋がる一つの方法なんだ。」世界では今も二週間に一つの言語が “消失” しています。そして、”Te Reo Maori” も実は国連から絶滅が危惧されている言語の一つです。ニュージーランドのヒーローは、”Te Reo Maori” で歌うことで言語の存続にまで大きな力を貸しているのです。
アートワークに描かれたマオリの戦士が全てを象徴するレコード。今回弊誌では、メンバー全員にインタビューを行うことが出来ました。「僕たち兄弟は Kura Kaupapa Maori に通っていたんだ。没入法を取り入れたマオリの学校だよ。毎朝のルーティンとして、学校で歌ってハカを踊っていたね。だからメタルとハカをミックスするのはいたって自然なことだったんだ。」 どうぞ!!

ALIEN WEAPONRY “Tū” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【VOIVOD : THE WAKE】JAPAN TOUR 2019 SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DANIEL “CHEWY” MONGRAIN OF VOIVOD !!

“I Don’t Use My Guitar Before I Have An Idea Of What The Melody Could Be. Music Is Not Inside The Instrument, It Is In My Mind, In My Heart. “

DISC REVIEW “THE WAKE”

プログレッシブとスラッシュの狭間でSFのスリルを享受するケベックの神怪 VOIVOD。5年ぶりとなるフルアルバム “The Wake” の異形と暴威は、バンドの結成35周年を祝賀する来日公演で Voivodian を狂気の渦へと導誘します。
衝動の “Rrröööaaarrr” から、サイバーな中毒性極まる “Dimension Hatross”、そしてアートメタルの極地 “The Outer Limits” まで、逸脱者 VOIVOD の奇々怪界はメタルシーンにおいて畏怖と畏敬を一身に浴び続けて来ました。
スラッシー、時にパンキッシュなアップテンポの猛威とプログレッシブな展開を、サスペンスと不協和に満ちたジャズ由来のテンションコードで賛美する異端の婚姻。そしてその倒錯的なシグニチャーサウンドは、ギターの革命家 Piggy の逝去、豪放磊落なベースマン Blacky の脱退にも、些かも揺らぐことはありませんでした。
バンドにとって何より僥倖だったのは、テクニカルデスのカルトヒーロー MARTYR で雄名を馳せた Chewy こと Daniel Mongrain を迎えたことでしょう。
インタビューで、「僕は11歳の時から VOIVOD のファンで、それこそ狂ったように聴いて来たんだから、もう僕の音楽的な DNA の一部、最も大きな影響の一つだと言えるだろうね。」と語るように、”Target Earth” でバンドに加わって以降、Chewy はあの不協和音とテンションの魔術師 Piggy の遺伝子をしっかりと受け継ぎながら、さらに VOIVOD の意外性、多様性を逞しく拡大しているのです。
バンド史上最も “シネマティック” で “キャッチー” なコンセプトアルバム “The Wake” はその進化を如実に証明するマイルストーン。アートワークにもあるように、Voivodian の象徴、4体の Korgull が見下ろす先は死に行く星。作品に描かれた気候変動、大災害に起因する混乱とカオスは当然我々の住む地球の姿に重なります。
しかし同時に滅びを誘う巨大災害や外敵の来襲は、人類に新たな真理、宇宙において孤高でもなければ唯一種でもないという、ある種の “目覚め” をもたらすのです。
アルバムオープナー “Obsolete Beings” で早くもバンドは Voivodian の心に洗脳のメカニズムを植え付けます。パンキッシュにドライブするリズムセクション、不協和のパラノイア、刻々と変化を続ける万華鏡のテンポとリズム。誇らしげにトレードマークをはためかせながら、一方で Snake の紡ぐボーカルライン、Chewy の奏でるギタートーンはこれまでよりも格段に甘くメロウ。印象的な中間部のブレイクでは、アトモスフェリックな顔さえ覗かせます。
水面下から現れたエイリアンの襲来と、唯一残った人類の贖いを描いた “The End Of Dormancy” は、アンセミックにテクニカルにストーリーを体現する VOIVOD シネマの完成形なのかもしれませんね。
「お前は知りすぎてしまったんだ…。」厄災来たりて笛を吹く。クリムゾンとフロイドの不可解な共演。時に凶暴を、時に畏怖を、時に孤独を、時に勇壮を、時に不屈を伝える千変万化、Chewy のリフデザインは常にストーリーへと寄り添い、Snake は幾つものキャラクターを一人で演じ劇場の支配者として君臨します。
初期 MEGADETH を想起させるハイパーインテレクチュアルなスラッシュアタックと、神々しきオーケストレーションがせめぎ合い、そして底知れぬダイナミズムを奉ずる “Iconspiracy”、サイケデリックに浮遊するキャッチーな幻想宇宙 “Always Moving”。そうしてアルバムは12分のエピック “Sonic Mycelium” で幕を閉じます。
「”The Wake” では全てが “チームスピリット” の下に制作されたんだ。」 その言葉は真実です。張り巡らされたディソナンスとテンションの菌糸をぬって、重層のコーラスさえ従えた煌めきのメロディーは新生 VOIVOD の野心を再び主張し、ポストロックの多幸感さえ仄めかせながらストリングスの絨毯へとあまりにコレクティブなプログレッシブの息吹を着地させるのです。
今回弊誌では、Chewy さんにインタビューを行うことが出来ました。「ソロをプレイする時は、吹き込むパートを何度も何度も聴き込むんだ。そうするとメロディーが頭の中で鳴り始めるんだよ。そうして僕はギターを手に取り、そのメロディーを紡ぐんだ。僕はメロディーが降りてくるまでギターを触りすらしないからね。音楽は楽器の中にあるんじゃない、僕の心、ハートの中にあるんだよ。」二度目の登場。天国の Piggy もきっと満面の笑みでこの作品を賞賛するでしょう。
余談ですが、ブックレットには Away がそれぞれの楽曲をイメージして綴ったアートの数々が描かれています。どうぞ!!

VOIVOD “THE WAKE” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【INTO ETERNITY : THE SIRENS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH TIM ROTH OF INTO ETERNITY !!

“As I Was Writing The Sirens, My TV Would Have The News Channel CNN On Just In The Background. After The Fukushima Disaster Happened, It Was On The News Everyday And I Was Just So Inspired To Write a Song Dedicated To Our Wonderful Japanese Fans.”

DISC REVIEW “THE SIRENS”

遺灰の散華は忘却という名の埋葬。しかしカナダのプログメタルミソロジー INTO ETERNITY は、10年の嗜眠から覚め神話の伝承を続開します。
00年代のプログメタルシーンにおいて、メロディーの乱舞、ハイテクニックの応酬にデス/スラッシュの凶暴やブラックメタルの陰鬱を投影した複雑怪奇なメビウスの輪、INTO ETERNITY の投げかけたハイブリッドのイデオロギーは、現代の多様なモダンプログレッシブへと繋がるゲートウェイだったのかも知れませんね。
特に、目眩く豊富なアイデアをシアトリカルに綴る “The Scattering of Ashes” の眩いばかりの完成度は、カタログの中でも群を抜いていました。
ところが、インタビューにもあるように、活動のスピードを落とさざるを得なくなった10年代初頭からバンドの歯車は狂い始めました。何より、七色ならぬ六人の声と顔を使い分ける傑出したシンガー Stu Block を ICED EARTH に引き抜かれたのはバンドにとって大きな痛手だったと言えるでしょう。
しかし、永遠を司る不死鳥は灰の中から蘇ります。「実は僕たちは何人か男性ボーカルをオーディションしたんだけど、最終的に Amanda のルックスと声が最も適していると判断したんだ。彼女は Stu が出していた全てのハイトーンをカバー出来るし、同時に僕等が必要としているデスボイス、グロウルもこなす事が出来るね。」と Tim が語る通り、新たに女性ボーカル Amanda Kiernanをフロントに据えたバンドは、新作 “The Sirens” で再びそのシグニチャーサウンドを地上に響かせることとなったのです。
幕開けは静謐なるピアノのイントロダクション。厳かに奏でられるモチーフは本編へと受け継がれ、決定的にネオクラシカルな響きをタイトルトラック “The Sirens” へ、ひいてはアルバム全編へともたらします。
マスターマインド Tim Roth の煌きは10年を経ても決して色褪せることはありません。ただし、かつて “エクストリームプログレッシブメタル” と称されたハイブリッドの比率は少々変化を遂げています。
確かに以前と比べて長尺の楽曲が増えた一方で、急転直下の場面展開、変拍子を伴うリズムのダンスはより自然体で作品の中へと溶け込んでいます。
もちろん、RACER X や CACOPHONY を思わせるスリリングなギターハーモニー、プログレッシブなデザイン、血湧き肉躍るクリエイティブなコンポジションは健在ですが、10年前と比較してよりパワーメタルへと接近したベクトルは 「”The Sirens” こそ、僕たちのレコードの中で最もヘヴィーメタルのファンにアピールする作品だと思っているよ。」 と語る Tim の言葉を強く裏付けます。
“Fringes Of Psychosis” はその新生 INTO ETERNITY を象徴する楽曲かも知れませんね。リッチなアコースティックギターから Michael Romeo にも迫るネオクラシカルの津波まで封じ込めた Tim のギターワーク、珠玉のメロディーと邪悪なグロウルを行き来する Amanda のウイッチリーなボーカル、エクストリームでブラストのハイテンションまで組み込んだリズム隊の妙。
静と動のダイナミズムに、リリカルで雄々しきドラマティシズム。即効性を持ってメタルアーミーの耳に馴染む、バンドのメタモルフォーゼは Stu が加入した ICED EARTH や “Jugulator” 期の JUDAS PRIEST にも並び得る鋭き牙とエナジーに満ちています。
惜しむらくは、若干チープなサウンドプロダクションでしょうか。インディペンデントでのリリースとなったため致し方ない部分とも言えますが、次作ではよりビッグなプロダクション、充実の制作環境に身を置けることを願います。
今回弊誌では Tim Roth にインタビューを行うことが出来ました。「”The Sirens” を書いている時に、テレビで、確か CNN だったと思うんだけど速報が入ったんだ。そうして、福島の災害が起きた後は、連日のようにニュースとなっていたね。僕はただとても感化されて、僕たちの素晴らしい日本のファンのために捧げる楽曲を書いたんだよ。」 どうぞ!!

INTO ETERNITY “THE SIRENS” : 9.7/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【REVOCATION : THE OUTER ONES】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DAVID DAVIDSON OF REVOCATION !!

“Sometimes I’ll Discover Some Cool Voicings While Working On a Jazz Tune And I’ll Try To Manipulate Them In a Certain Way So That It Fits Into The Metal Framework Better.”

DISC REVIEW “THE OUTER ONES”

エクストリームメタルシーンの “名状しがたきもの”。刻々とその姿を変える轟音の支配者 REVOCATION は、神秘探求者たるリスナーの脳を時に捕捉し、時に喰らうのです。
「彼らは時代によって音楽性を少しづつ変化させていたでしょ?」David は信奉する DEATH の魅力についてそう語りましたが、自らのバンド REVOCATION にも同様の試みを投影しています。
ハイテクニカルなデスメタルの知性とスラッシュメタルの衝動の中に、オーセンティックなメタルの様式美を組み込んだ初期の煌きは眩しく、一方で鬼才 ARTIFICIAL BRAIN にも所属する Dan Gargiulo 加入以降の、前衛的で中毒性を宿した VOIVOD にも通じる不協和のカオスもまた魅力の一つだったと言えるでしょう。
そうして最新作 “The Outer Ones” でバンドが辿り着いた魔境こそ、トレードマークである演奏能力とアグレッションを拠り所とする”完璧なデスメタル”、すなわち “The Inner Ones” に、荘厳でリリカルなメロディーのイヤーキャンディーやジャズの複雑怪奇、すなわち “The Outer Ones” を織り込んだコズミックな宇宙でした。
饗宴の始まりはダークでソリッドな “Of Unworldly Origin” から。TRIVIUM の爽快さまでイメージさせる耳障りの良いファストチューンは、しかし同時にブルーノートを起点としたジャジーなコードボイシングで自らの異形をアピールします。
分解してスウィングさせればツーファイブにもフィットするウネウネとしたリードプレイから、冷徹でしかしファンタジックな DEATH の遺産、ツインリードへと雪崩れ込むギターの魔法は2人のマエストロを備える REVOCATION ならではの至宝でしょう。
実際、唯一のオリジナルメンバーとなった David Davidson のジャズに対する愛情は、先日あの TESTAMENT のジャズスラッシャー Alex Skolnick との対談でお互いが認め合ったように、本物です。ギター教師の一面も持つインテリジェントな David は、メタルにとって規格外のコード進行、ボイシング、そしてスケールを操りながらアルバムを未知の領域へと誘います。
ロマンチックとさえ表現可能な “Blood Atonement” はまさに David の異能が濃縮した楽曲でしょう。ブラッケンドな激情を叩きつける漆黒のワルツは幽かな叙情を宿し、一転して静寂の中紡がれるクリーントーンの蜜月は Joe Pass の匠を再現します。まさに David 語るところの “コントラスト” が具現化した “血の償い” は、CYNIC のアトモスフィアさえ纏って怪しくも神々しく輝くのです。
“Fathomless Catacombs” で再び DEATH への深い愛情を示した後、バンドは “The Outer Ones” で BETWEEN THE BURIED AND ME の重低音のみ抜き出したかのような不規則な蠢きでラブクラフトのホラーを体現し、さらに不気味なコードワークが映える “Vanitas” では VOIVOD はもとより ATHEIST, PESTILENCE のカオスをも須らく吸収してみせました。
アルバムを締めくくる大曲 “A Starless Darkness” はまさに名状しがたき暗闇。ドゥームの仄暗い穴蔵から這い出でし闇の化身は、勇壮なエピック、スラッシュの突心力、デスメタルの沈痛、シュレッドのカタルシスと多様にその姿を変えながら、OBSCURA と並びプログレッシブデスメタルの森を統べる者としての威厳を示すのです。
今回弊誌では、バンドのマスターマインド David Davidson にインタビューを行うことが出来ました。「ジャズの楽曲に取り組んでいる時、しばしば僕はクールなボイシングをいくつか発見するんだけど、それがメタルのフレームワークへとうまく収まるように手を加えてみるんだ。」フックと展開の目眩くクトゥルフ。今、最もハイテクニカルなギターチームが揃ったバンドの一つでしょう。どうぞ!!

REVOCATION “THE OUTER ONES” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SKELETONWITCH : DEVOURING RADIANT LIGHT】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH SCOTT HEDRICK OF SKELETONWITCH !!

“Any Time My Writing Wanders Near The Territory Of “Ambient” Or “Cinematic”, Ryuichi Sakomoto Is Going To Be An Influence.”

DISC REVIEW “DEVOURING RADIANT LIGHT”

ブラックメタル、メロディックデスメタルを獰猛な原衝動、スラッシュメタルに奉呈し、”ブラッケンド-スラッシュ” の峻路を切り拓くオハイオの妖魔 SKELETONWITCH。
バンドの発するクリエイティブな変幻の瘴気は、メタル伏魔殿の魑魅魍魎を遥かな幽境へと誘います。
2004年からエピカルなメロディーと凶猛な響骨を混交し、エクストリームメタルの超克を多様に牽引し続ける変異体は、2014年にキャリアの重大な分岐点を迎えました。
アルコールの乱用を要因とする素行の悪化に堪え兼ねたバンドが、ボーカリスト Chance Garnette を解雇したのです。ギタリスト Nate の兄弟でもある創立メンバーが引き起こした問題は、徐々に存在感を増しつつあった SKELETONWITCH に暗い影を落とすかのようにも思われました。
しかし、元 VEIL OF MAYA、現 WOLVHAMMER のフロントマン Adam Clemans を迎え入れた彼らは、アトモスフェリックなブラックメタル、アンビエント、プログレッシブなどその多様性を一際研ぎ澄まし、地殻変動に端を発するネクストレベルのクリエイティビティーへと到達することになったのです。
バンドのロゴやアートワークの方向性まで変更しリリースした “Devouring Radiant Light” は、実際 “再発明” のレコードです。
アルバムオープナー “Fen of Shadows” は過去へのレクイエムにして未来へのファンファーレ。バンドのトレードマーク、クラッシックメタルのフックやメロデスのメランコリーは確かに耳孔の奥へと沈み行き、一方で幾重にもレイヤーされたポストブラックのギターオーケストラ、中盤の荘厳なるアトモスフィア、そしてプログレッシブなグランドデザインは破天荒な背教者をレコードへと招き入れるのです。
事実、「アルバムには大きく分けて二つのスタイルが存在していると思う。」と Scott は語ります。そして Nate は直線的でスラッシー、Scott は重厚でプログレッシブ。コンポジションの棲み分けを念頭に置けば、”Devouring Radiant Light” は Scott の遺伝子をより多く受け継いだ麒麟児の光明だと言えるでしょう。
切迫するトレモロの嗎とブラストの喧騒でダーク&メロディックなブラックメタルの深淵を探求する “Temple of the Sun”、PALLBEARER や MASTODON のキャッチーなドゥーム/スラッジにも共鳴するエピック “The Vault” と拡大を続ける SKELETONWITCH の魔境。
Kurt Ballou, Fredrik Nordstorm のドリームチーム、さらに JOB FOR A COWBOY, BEHEMOTH との仕事で知られるゲストドラマー Jon Rice の推進力もサウンドの深化に華を添えます。
中でも “最もバンドの進化を示している” と語るタイトルトラック “Devouring Radiant Light” は文字通り熾烈な光彩。NEUROSIS, ULVER, OPETH, さらにはカスカディアンブラックの陰影と実験性までも胸いっぱいに吸い込んだブラッケンド-スラッシュの革新的な波動は、光と闇のダイナミズムを携えながらエモーショナルなダンスを踊るのです。
“Sacred Soil” は作品の終幕、結論に相応しきインテンスの断末魔。エレガントなハーモニーとブルータルなリズムのカコフォニーは魔女の帰還と新たな旅路を祝う地下室の祝祭なのかもしれませんね。
今回弊誌では、ギターチームの片翼 Scott Hedrick にインタビューを行うことが出来ました。「坂本龍一氏はまさに僕の作曲面に多大な影響を与えているんだよ。」どうぞ!!

SKELETONWITCH “DEVOURING RADIANT LIGHT” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【THOUSAND EYES : DAY OF SALVATION】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH KOUTA OF THOUSAND EYES !!

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Japanese Metal Super Group, Thousand Eyes Mixed Extreme Melanchory And Aggression With Their New Masterpiece “Day Of Salvation” !! Don’t Fear The Rampage Tyrant !

DISC REVIEW “DAY OF SALVATION”

LIGHTNING, UNDEAD CORPORATION, YOUTHQUAKE, TEARS OF TRAGEDY, GALNERYUS。ジャパニーズエクストリームの粋を集めた哀士 THOUSAND EYES が救済の慈光に慟哭を刻む雄編 “Day of Salvation” をリリースしました!!狭義のメロディックデスメタルから飛翔し変貌を遂げた破竹の一撃は、”荒れ狂う暴君” の名に相応しき真なるメタルの王道です。
ARCH ENEMY, IN FLAMES, AT THE GATES といったゴーセンバーグ鋼鉄騎士団の大いなる遺産を受け継いだジャパニーズヒーローは、90年代に受けた薫陶を紋章にその領地を華麗に拡大しています。
威風堂々のインストルメンタル “Dawn of Despair” に導かれ来臨するオープナー、救済の日 “Day of Salvation” はまさにバンドが理想とする “メタル” を具現化した会心のキラーチューン。まるで “Hellion~Electric Eye” を2018年に甦らせたかのような完璧なメタルドラマは、荘厳なツインリードを切り裂く覇者のデスラッシュで幕を開けます。
AT THE GATES の遺伝子を確かに宿す激烈なリフワークは、トレモロの洪水へと流動し、遂には美麗なギターメロディーと “歌える” シャウトの巧みに交差するカタルシスへと到達するのです。
実際、Dougen 氏のシャウトは以前よりも生々しく感情的で、メロディーを抱いた “歌” へと接近しており、綿密にデザインされたギターワークと双璧を成すことで時に絶声のシンガーをも上回るエモーションを創出し、千の眼に映る覇道を見せつけていますね。
「ピュアなメタルサウンドを追求する一方で、ブルージーなもの、グルーヴのあるもの、ジャズ的なアプローチなど、 非メタル的要素も散りばめられています。」 と Kouta 氏が語るように、”Day of Salvation” で示された拡大するバンドの可能性は無限大です。
SikTh や THE DILLINGER ESCAPE PLAN のカオスを感じさせる “Dead Again” の難解なメインリフは実にコンテンポラリーですし、”Dread My Brain” では LAMB OF GOD をイメージさせる重く鋭いモダンメタルの牙でリスナーを威嚇します。特筆すべきは、アルバムに息づく伝統とモダンは極めてナチュラルに溶け合い THOUSAND EYES の色へと染まり “正統派メタルでありながら先鋭的な雰囲気を持つメタルアルバム” を実現している点でしょう。
事実、ある特定の色 、侘び寂びと哀愁を湛えた繊細なる “千眼色” が存在することはバンドにとってこの上ない強みに思えます。そしてその “色” の一端は日本の異端とも言えるメタル文化が育んだようにも感じます。
例えば、”Lost Forever” のイントロで聴くことの出来るメロディックハードロックの胎動、風薫る凛とした音の風景などは海外のデスメタルバンドには逆立ちしても真似出来ないでしょうし、何より、”Astral Skies” のあの ASIA を想わせる豊潤なるメロディーはバンドが至高にしてこのジャンルの貴重な特異点だと強く確信させてくれるはずです。
勿論、Kouta & Toru のギターチームは時に調和し、時に鬩ぎ合い、クラッシックの香り引き立つリードギターで流麗の限りを尽くします。「クラシックとロックの中間点というのは、まさに僕の理想とするギタースタイルです。」 と語る通り、Kouta 氏が楽曲に織り込むシェンカーライクなトーンとパッセージの数々は白眉で、まさにギターでしか表現出来ない五線紙と魂の中間点でリスナーの感情を喚起するのです。
当然、彼らの千眼色は細部まで吟味を重ねこだわり抜いた職人のコンポジションに支えられています。欲しい場所に欲しいメロディーを、フックにフックを重ねた日本画のように綿密な音の色彩は “インテレクチュアル・メロディックデスメタル” とでも称せるほどに知的で艶やかです。確かにここには MEGADETH の理想が刻印されています。そしてそのイデアルを実現たらしめたのが、切れ味鋭きエクストリーム手数王 Fumiya 氏の存在であることは明らかでしょう。
アルバムは究極にメランコリックな PANTERA、”Devastated Moment” で短くしかし一切無駄のない43分の救済を締めくくりました。
今回弊誌では、Kouta さんにインタビューを行うことが出来ました。「正直僕はメロデスにそこまで詳しくありませんし、コピーしたこともほとんどなく、インスピレーションよりも方法論としての影響が大きいと思います。」 飛翔伝説の幕開けです。どうぞ!!

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THOUSAND EYES “DAY OF SALVATION” : 10/10

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INTERVIEW WITH VILLE LAIHIALA 【S-TOOL, SENTENCED, POISONBLACK】JAPAN TOUR 2018 SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH VILLE LAIHIALA OF S-TOOL !!

S-TOOL Photography: Loma Graphics/ Jani Mahkonem Retouch: Loma Graphics/ Jani Mahkonen
S-TOOL
Photography: Loma Graphics/ Jani Mahkonem
Retouch: Loma Graphics/ Jani Mahkonen

One Of The Best Singer In Finland, Ville Laihiala Talks About His New Band S-Tool, Upcoming Japan Tour, And Legendary Sentenced & Poisonblack !!

ABOUT VILLE LAIHIALA

SENTENCED で慟哭のノーザンメランコリックメタルを創成し、POISONBLACK でもより幅広い枠組みの中でその叙情を追求し続けて来た不世出のシンガー Ville Laihiala が、新たな旅路 S-TOOL で遂に日本へと帰還を果たします!POISONBLACK 以来8年振りとなるレジェンドの降臨は、かつてより硬質なエキサイトメントを誘うはずです。
変革は突然でした。1995年、IN FLAMES の “The Jester Race”、DARK TRANQUILLITY の “The Gallery”、AT THE GATES の “Slaughter of the Soul” と時を同じくして名盤 “Amok” を世に送り出し、メロディックデスメタルの骨格を形成した SENTENCED。しかし彼らがその領域へと留まったのはほんの僅かな期間のみでした。
EP “Love & Death” で変化の予兆を示したバンドは、デスボイスを廃し、新たに独特のダーティーボイスで悲壮を歌い紡ぐ Ville Laihiala を迎え入れる決断を下します。
振り返ってみれば、メインコンポーザー Miika Tenkula の音楽的ビジョンは “Amok” の時点から他のメロデスレジェンドに比べて一際洗練され拡散していたようにも思えます。そしてその天賦の才は Ville という漆黒の翼を得て、フィンランドの凍てつく空寂を縦横無尽に飛び翔ることとなりました。
1998年にリリースされた “Frozen” はバンドの全てが噛み合い理想が形象化したはじめての作品と言えるのかも知れませんね。
“The Suicider” が象徴するように、時にニヒルに、時にストレートに死や自殺をテーマとして扱う SENTENCED。シンプルでしかし印象深いギターメロディーに融和する悲嘆と失意の絶唱は、あまりに直情的に極寒の空気を切り裂きます。
ゴシックなイメージでアグレッシブに突き進む彼らの手法は恐らく HIM や NEGATIVE といった後続にも大きなインスピレーションを与えています。つまり SENTENCED はメロデスと並び二つのジャンルで先駆者の地位にある稀有な存在だと言えるでしょう。
同時に、勿論これはメタルですが Miika のメタルらしいリフワークから距離を置いたそのギターフィロソフィーには、確かにパンクやグランジの奔放なアティテュードも滲んでいますね。
赤盤 “Crimson” の “Killing Me Killing You” で図らずも耽美と絶望があまりに紙一重であることを証明して見せた後、SENTENCED は完璧なる傑作、メランコリーの洪水青盤 “The Cold White Light” を完成させます。やはりこのバンドが生み出すメロディーは衝撃的なまでに胸を抉ります。まさに絶頂期。しかしバンドの終焉も突然でした。
“暗闇で手を差し出すけど誰もいないんだ。なぜただ人生を生きるだけでこんなにも辛いんだろう。僕は絶望に駆られてそれでも必死で手を差し出すんだ。” (No One There)
永眠した SENTENCED についてはあまり触れたがらなかった Ville ですが、「僕はいつだって自分自身を表現したいと思っているし、その必要も感じているよ。自らの “ノイズ” と言葉でね。だから確かに時にはモチベーションを保つのに苦労することはあったんだよ。」 と語ってくれました。
解散後に立ち上げた POISONBLACK では、ギタリスト、コンポーザーとしてもその魅力を存分に発揮した Ville。恐らくは、クリエイティビティーを制限される SENTENCED での活動に限界を感じたのかも知れませんね。
とは言えバンドの墓標、自らを葬る “The Funeral Album” で回帰したラフ&メタリックな音像は “May Today Become The Day” や “Vengence Is Mine” が証明するように、充分に魅力的なものでした。そしてその悲哀を帯びた硬性は、近年の METALLICA や DISTURBED ともシンクロしながら確かに S-TOOL のデビュー作 “Tolerance 0″ にも引き継がれているのです。
今回弊誌では、Ville Laihiala にインタビューを行うことが出来ました。”No Reunion!!” 悲しいことに我々は病で Miika を失いました。当然です。どうぞ!!

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DEAD CROSS : DEAD CROSS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JUSTIN PEARSON OF DEAD CROSS !!

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Metal & Hardcore Energetic Supergroup, Dead Cross Brings Life Back Into The Genre With Groundbreaking Debut Record “Dead Cross” !!

DISC REVIEW “DEAD CROSS”

“SLAYER のようにアグレッシブで、FANTOMAS のように奇妙”。Dave Lombardo ( ex-SLAYER, FANTOMAS ), Mike Patton ( FAITH NO MORE, FANTOMAS ), Mike Crain ( RETOX ), Justin Pearson ( THE LOCUST, RETOX ) というエクストリームミュージックの重鎮が集結した新バンド DEAD CROSS が衝撃のデビュー作をリリースしました!!百戦錬磨の古兵たちが放つ一撃はあまりに熾烈かつ迫真です。
SLAYER での鬼神たる Dave Lombardo、FAITH NO MORE での異形たる Mike Patton については今さら多くを語るまでもないでしょう。勿論、その2人がタッグを組んだアヴァンギャルドで “アンチアート” な “Dada-Metal”、FANTOMAS についても。過去に Lombardo は、「もしピカソがミュージシャンだったら FANTOMAS のような音楽を創造しただろう。」 とさえ述べています。
一方で、THE LOCUST はグラインドコア、パワーバイオレンス、ノイズロックをハードコアのフォーマットへと落とし込んだ多様かつ複雑でダイナミックな音楽を信条としており、さらに THE LOCUST の美学こと Justin Pearson が新たに立ち上げた RETOX はハードコアパンクのエキサイティングな新鋭です。
インタビューで Justin は、「ジャンルは実に厄介なもので、自分の目的はリスナーを無関心にしないこと」 だと語ってくれましたが、彼らのキャリアと独自性を見れば、DEAD CROSS という奇跡の化学反応がそのイメージを叶えることは確かなようにも思えます。
実際、”Dead Cross” は期待以上にカオスでエクストリーム、ゲームチェンジングなレコードです。「みんなの音楽に対する感じ方を変えたいし、もっと言えば壊したいと思っているんだよ。」 と語る Justin の野心は、比類なきメンバーと類希なるシンパシーを得て遂に達成されたと言えるのかも知れませんね。
“Dead Cross” が死の直前起こる体温の急降下と脈拍の急上昇、つまり体温曲線と脈拍曲線が交差する現象である “死兆交差” を指すように、アルバムは怒りとフラストレーション、そして究極的にはそこから生じる “死” を様々な観点、手法で表現した作品だと言えるでしょう。
事実、Dave Lombardo は Rolling Stone 誌のインタビューで、このバンドがパリのバタクランで起こったテロに対する大きな憤りから生まれたことを認めています。これが完璧なハードコアアルバムで、自身の最もブルータルで抽象的なレコードであることも。
勿論、Dave 究極の一枚に SLAYER の “Reign in Blood” を挙げるファンも多いでしょう。奇しくもほぼ同じ、30分を切るランニングタイムの2枚のレコードは、そのインパクトにおいても同等の強い光彩を放っているように思えます。
“Reign in Blood” が伝説と化したのは、その際限なきアグレッションと呼応して溢れ出る瑞々しきフックの数々があったからこそ。怒りに満ちた “Dead Cross” にも同様に、リスナーをリピートへと誘う豊潤かつインテリジェンスな仕掛け、キャッチーさが潜んでいるのです。
アルバム前半、ハードコアパンクとスラッシュのエナジーを二乗し突進するアドレナリンラッシュの渦中においても、THE LOCUST を想起させる知的な混沌、ノイズ、変拍子、テンポチェンジは極上のアクセントとして揺るがぬ存在感を放ちます。
さらにBandcamp のインタビューで、「ハードコアのルーツに回帰したんだ。クソと重要さの見分けがつくようになった。」 と語る Dave のドラミングは、その比類なきビートをより感情にまかせ、性急に、複雑に、そしてブルータルに刻みます。80年代のベイエリアパンクから、THE DILLINGER ESCAPE PLAN のようなよりコンテンポラリーなマスコアまで自由自在な Mike Crain のリフワークもスマートで耳を惹きますね。そして何より Mike Patton は Mike Patton です。
「オペラティックなバックヴォーカルとボイスエフェクトをレコード全体にレイヤーすることはどうしても避けられなかったんだ。」 怒れるレコードに似つかわしくない Mike の業、カルマはバンドを驚かせました。しかし、同時に Dave は Mike 由来の異質なるハーモニーやオルタナティブなメロディーラインがアルバムに深みを加えたことも認めています。
CELTIC FROST のアヴァンギャルド、邪念、悪夢を飲み込んだ “Bela Lugosi’s Dead” や “Gag Reflex”、パンクのキャッチーさを奇妙に再構築した “Shillelagh”、よりプリミティブなスクリームが狂気を育む “The Future Has Been Cancelled” といった楽曲群は Mike の貢献なしでは成立しなかったはずです。
鬼才 Ross Robinson を含め5人の才能が火花を散らしたアルバムは、バンドの次なる可能性を諮詢する、ゴシカルでインダストリアルな “Church of the Motherfuckers” でその幕を閉じました。
今回弊誌では Justin Pearson にインタビューを行うことが出来ました。「全てのクリエイティビティーに感謝を」 どうぞ!!

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DEAD CROSS “DEAD CROSS” : 10/10

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