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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ALKALOID : LIQUID ANATOMY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ALKALOID !!

German Extreme Metal Super Group Alkaloid Shows Amazing Musicianship And Creativity With Their Newest Record “Liquid Anatomy” !! Can You Imagine Yes & Rush Mixed With Modern Metal Aggression?

DISC REVIEW “LIQUID ANATOMY”

テクニカルデスメタルの牙城、ドイツに惹起する維新の兆し。千軍万馬の猛者が締盟したプログレッシブの絆 ALKALOID は、最新作 “Liquid Anatomy” で天壌の宇宙から中毒性のマイクロウエーブを発します。
ALKALOID ほどスーパーバンドの表現が相応しい音楽集団はそう多くはないでしょう。これまでメンバー5人がかかわってきたバンドは、DARK FORTRESS, NONEUCLID, SPAWN OF POSSESSION, OBSCURA, NECROPHAGIST, ABORTED, GOD DETHRONED, BLOTTED SCIENCE と文武両道の精鋭ばかり。
中でも、「僕たちが NECROPHAGIST と OBSCURA で始めたことを今では無数のバンドがやっているんだ。」と語る通り、局所性ジストニアによる中指の不遇をも覆す不屈のギターマエストロ Christian Muenzner、新たに HATE ETERNAL にも加入したギターとピアノを操るドラムユーティリティ Hannes Grossmann のかつての音楽的なアイデアが、現在の包括的な Tech-metal への崇高なるインスピレーションとなっていることは明らかですね。
とはいえ、「僕たちは新たなバンド、プロジェクト、アルバムの度に自分たちを”再発明”するようにしているんだよ。特定のスタイルに執着してしまわないようにね。」と Christian が語るように、 ALKALOID は定型化したテクデスの様式、さらには傑出したデビュー作さえ過去の時空へと置き去りにしながら、RIVERS OF NIHIL, IHSAHN, HAKEN, GHOST ともシンクロするクラッシックなプログのスピリットを昇華した新たなメタルの潮流に身を委ねているのです。
アルバムオープナー “Kernel Panic” こそ進化の象徴。ヴィンテージのシンセサウンドに導かれ、滔々と湧出するシーケンシャルなギターフレーズはまさに YES や RUSH の遺伝子を色濃く宿す鮮やかな落胤。DARK FORTRESS 等で残虐な威厳を浴びせる Morean は、驚くことにその歌唱を Jon Anderson のチャンネルへと接続し、神秘的でキャッチーなロックの崇高美を具現化していくのです。
イーヴィルなディストーションサウンドは変調の証。ナチュラルに獰猛なモダンメタルの領域へとシフトする、一体化したバンドの猛攻は衝撃的ですらありますね。一転、再びプログの多幸感が再臨し、時に相反する二つの次元が融解。TOOL と CYNIC、一方で YES と VAN HALEN が楽曲の中で流動し躍動する “In Turmoil’s Swirling Reaches” にも言えますが、ALKALOID の振るう奇想天外なタクト、コントラストの魔法は実際群を抜いています。
そして先述したバンドと同様に、クラッシックとコンテンポラリー、荘厳と嗜虐、ポップと知性の狭間を自由自在に行き来するこのシームレスなアイデアは、確かに多様なモダンプログレッシブの根幹を成しているはずです。ただし、ALKALOID のプログレッシブには特に “90125” や “Signals” など80年代の風を受けた独特の色香も存在しますが。
MORBID ANGEL と MESHUGGAH が同乗する重戦車 “As Decreed by Laws Unwritten”、トライバルで複雑なリズムに呪術と叙情のボーカルが映え GOJIRA の理念ともシンクロする “Azagthoth” でブラックホールの物理現象を追求した後、バンドはタイトルトラック “Liquid Anatomy” でさらに新たな表情を披露します。
実際、これほど感動的で心を揺さぶるバラードと、エクストリームメタルのレコードで出会えるとは僥倖以外何者でもないでしょう。GENESIS や PORCUPINE TREE の叙情、クラッシックや教会音楽のスピリットをダークに消化した荘厳の極みは、感情の波間を悲哀で染め抜きます。
アルバムを通して言えますが、特にこの楽曲で聴くことの出来る Christian のエモーションとテクニック全てを楽曲のためだけに捧げた神々しきソロワークは、最後の “ギターヒーロー” を誇示して余りある激情とスリルに満ちていますね。
アルバムを締めくくるは20分のラブクラフトモンスター、6つの楽章から成るエピック “Rise of the Cephalopods” は ALKALOID 版 “2112” もしくは “Cygnus X-1 Book II: Hemispheres” なのかも知れませんね。プログロックの構成美、モダンメタルの複雑なグルーヴ、モダンプログの多様性にアトモスフィア。全てがここには存在します。現存の南極大陸を葬り、頭足類が進化を遂げる “If” の SF ストーリーは、実はシーンと自らの立ち位置を密かに反映しているのかも知れませんね。
今回弊誌では、Morean, Hannes, Christian の3名にインタビューを行うことが出来ました。 NECROPHAGIST や OBSCURA についても重要な証言が飛び出したと思います。「Hannes がアルバムのいくつかの瞬間で “90125” の時代を超越したサウンドに近づいたという事実は、彼がそれを意図しているのかいないのかに関わらず、エンジニア、プロデューサーとしてのスキルに対する大きな賛辞だよ。 1983年に彼らが成し遂げたサウンドを超えるものは、今日でもほとんどないからね。」どうぞ!!

ALKALOID “LIQUID ANATOMY” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【RIVERS OF NIHIL : WHERE OWLS KNOW MY NAME】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ADAM BIGGS FROM RIVERS OF NIHIL !!

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Pennsylvania Based Progressive Death Metal Quinted, Rivers Of Nihil Contribute To Re-branding Death Metal Into A Eclectic, Expressive Art-form With Incredible New Record “Where Owls Know My Name” !!

DISC REVIEW “WHERE OWLS KNOW MY NAME”

遂に食物連鎖の頂点へと躍り出たペンシルベニアの梟神 RIVERS OF NIHIL が、深遠かつエクレクティックなプログレッシブデスメタルへとドラスティックな変貌を果たす傑作 “Where Owls Know My Name” をリリースしました!!生と死、そして知性を司る伝承の神明は、猛禽の鋭さと神々しきアトモスフィアでシーンの潮流を支配します。
テクニカル、メロディック、デスコア、ブルータル。雨後の筍のごとく現れるデスメタルアクトの大半は、エモーションのスペクトルを怒りに起因する狭い領域へとフォーカスし、ある意味では檻の中で固定観念と共に囚われているようにも思えます。
「この作品では、僕たちが期待されているようなサウンドを放棄した。」と Adam が語るように、RIVERS OF NIHIL が “Where Owls Know My Name” で達成した偉業は、真にユニークな感性で鋼鉄の慣習から羽ばたいたその勇気にあると言えるでしょう。
多様で創造性に満ち、複雑でしかし凄艶な星の一生を目撃するサイエンスフィクションは、数年前に FALLUJAH がアトモスフィアと共に導入したジャンルのパラダイムシフトをも超越し、さらに時空を行き来するタイムマシンなのかも知れませんね。
アルバムオープナー “Cancer / Moonspeak” は来たるべき運命、旅路のムードを決定づけます。まるで CYNIC のような浮遊するアンビエントは、アコースティックの響き、レトロなシンセ、ムードに満ちたクリーンボイスを伴ってリスナーを深遠なるストーリーへと誘います。
刹那、雷鳴のように鋭利なギターリフが轟くと雰囲気は一変。革命的な “The Silent Life” がスタートします。揺るぎのない無慈悲なアグレッションとインテンスは、徐々に理知的なギターと官能のサクスフォンが支配するスロウなジャズブレイクへと転換していきます。その変化は驚くほどにナチュラルでオーガニック。そうして静と動、混沌と平穏のコントラストは終盤に向けて奇跡の融解を遂げるのです。まるで人生本来の姿を描くかのように。
CANNIBAL CORPSE と KING CRIMSON が果たした未知との遭遇。例えることは容易いですが、実際、獰猛な猟奇性と神々しき英知を寸分も失うことなく一つのサウンドクラフトに収めることがどれほど困難かは想像に難くありません。何より彼らのデザインはあまりに自然で、神々の創造物のように生き生きとした姿を晒しているのですから。
厳かなクリーンボーカルを導入し、モダンなメロディックデスメタルにサイケデリックな夢幻のアトモスフィアを付与した “A Home”、激烈なアサルトに一片の叙情を込めて老衰の無常を伝える “Old Nothing” を経て辿り着く “Subtle Change (Including the Forest of Transition and Dissatisfaction Dance)” はアルバムのハイライトだと言えるでしょう。
“Epitaph” を思わせる悲壮なアコースティックをイントロダクションに据えた8分30秒のエピックは 「KING CRIMSON は僕のオールタイムフェイバリットバンドなんだよ。」と Adam が語る通りクラッシックなプログロックの息吹を全身に宿した濃密な叙情のスロウダンス。ソフトでエレガントな繊麗と、野蛮で蒼然としたアグレッションは、ギターやサクスフォン、オルガンのトラディショナルで大胆ななソロワーク、プログロックのダイナミックな変拍子やシーケンスを抱きしめながら、詩情と偉観そして奇妙なカタルシスを伴って文明の移り変わりを描く壮大なマグナムオパスを形成するのです。
一方でこの大曲には、djenty なリフワークやシンフォブラックの狂騒などコンテンポラリーな一面も散りばめられており、幽玄なクリーンボイスが創出する崇高美とも相俟って、もしかすると NE OBLIVISCARIS が纏う神秘ともシンクロしているのかも知れませんね。
続くインストゥルメンタル “Terrestria III: Wither” では、情景を切り取るポストロックのデザインを導入し、コンテンポラリーなエレクトロニカやアンビエント、インダストリアルノイズのキャンパスに冷徹かつ耽美な絵巻物を描いてみせるのですから、バンドのエクレクティックな感性、タイムラインの混沌には驚かされるばかりです。
アルバムは、バンドの審美を全て詰め込んだタイトルトラックで再度サクスフォン、ヴィンテージシンセ、クリーンボイスの温もりを呼び起こし作品のコアを認識させた後、ダークなギターがメロトロンの海を切り裂く “Capricorn / Agoratopia” で荘厳にリリカルに、一握りの寂寞を胸に秘め星の死を見届けながらその幕を閉じました。
今回弊誌では、ベース/クリーンボーカルを担当する Adam Biggs にインタビューを行うことが出来ました。まさにメタルとプログのタイムラインに交差する異形のランドマーク。モダン=多様性とするならばこの作品ほど “モダン” なスピリットを抱いた奇跡は存在しないでしょう。ex-THE FACELESS の Justin McKinney、BLACK CROWN INITIATE の Andy Thomas もゲストとして素晴らしい仕事を果たしています。どうぞ!!

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RIVERS OF NIHIL “WHERE OWLS KNOW MY NAME” : 10/10

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EXCLUSIVE INTERVIEW 【CONCEPTION : ROY KHAN】2018 REUNION SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ROY KHAN OF CONCEPTION !!

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The Voice Of Prog-metal, Former Kamelot Singer Roy Khan Is Back With Reunited Norwegian Legend Conception !!

CONCEPTION IS BACK !!

時代に咲いた鮮やかな徒花、ノルウェーが産んだプログメタルレジェンド CONCEPTION が遂に帰ってきます!!長すぎた沈黙を破る伝説の帰還は、不世出のシンガー Roy Khan の復活を伴いシーンに歓喜の渦を巻き起こしています。
KAMELOT の金看板として、その艶やかで煽情的な歌唱を披露していたスーパースター Roy Khan がバンドからの脱退を表明したのは 2011年春の事でした。音楽大学でオペラと声楽を学んだ Roy の歌唱技術、歌に込めるエモーション、ファルセットの魔法は別格。「もし僕があの時 KAMELOT を辞めていなかったとしたら、今日僕はここにいないだろう。」とインタビューで語った通り、不可避な “燃え尽き症候群” の治療が要因とはいえ、作曲にも大いに貢献を果たしていたマエストロ突然の離脱はあまりにショッキングな出来事でした。
「僕は本当に音楽に関係する全ての人に対して、全てのコミュニケーションをシャットダウンしたんだからね。」音楽から離れていた7年間、Roy は教会の職員や教師として働いていたようです。その生活も悪くはなかったと話すシンガーは、しかし遂に自身の才能を再び世界に解放する準備が整ったと溢れる自信を漲らせます。
「実際に僕たちが解散したことはないんだよ。何と言うか、棚上げしていたって感じだったね。」 という言葉が裏付けるように、友人として連絡を取り続けていた CONCEPTION が Roy 復帰の舞台となったのは自然で最良の選択に思えます。実際に、バンドは2005年にライブ限定で一時的なリユニオンを果たしていますし、”ここ何年かは何度も、いつかある時点で何かやりたいねと話して” いた訳ですから。
神秘的で崇高、ある種哲学的とも言える CONCEPTION の “プログレッシブ” は、登壇が少し早すぎたのかもしれませんね。スパニッシュギターが夕日に映えるデビュー作 “The Last Sunset”、キャッチーでドラマティック、稀代のバラード “Silent Crying” を擁する “Parallel Minds”、複雑かつ荘厳な楽器の宗儀 “In Your Multitude”、そして冷徹でダークな歌の涅槃 “Flow”。
「僕たちはいつも、自分たちをリニューアルしようと心掛けて来たんだよ。それまでに作った楽曲のようなサウンドを持つ新曲を作らないというのが、バンドのポリシーだったんだ。」と語る通り、これまで CONCEPTION が残した4枚の作品は確かに全て合わせた焦点が異なります。
しかしそれでもその勇敢なる多様性、DREAM THEATER の “Awake” を推し進めたかのような独特の内省的なアトモスフィア、近年の FATES WARNING にも通じるインテリジェンスの糸を巡らすダークなインテンシティー、そして SEVENTH WONDER にも受け継がれた洗練のデザインは全ての作品に浸透しており、まだまだ与し易いスピード&パワーが全盛だった当時よりも、エクレクティックなモダンメタルのスピリットが透徹した現在こそ正当な評価が得られるはずです。
すでに先を見据えるバンドの復活EPは秋にリリースが予定されています。「僕たちの全ての歴史、要素がミックスされるわけさ。」と語る Roy ですが、その歴史にはもちろん自身が経験した KAMELOT での荘厳な旅路や、フラメンコの情熱をその身に宿すギターマイスター Tore Østby が ARK で育んだプログレッシブな冒険も含まれているはずです。期待に背くことはないでしょう。そして願わくば、失った20年を取り戻すコンスタントな活動を望みたいところですね。
今回弊誌では、ボイス・オブ・プログメタル Roy Khan にインタビューを行うことが出来ました!Welcome Back Roy, and CONCEPTION! Here We Go!!

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【AUGURY : ILLUSIVE GOLDEN AGE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MATHIEU MARCOTTE OF AUGURY !!

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Augury Give Proof Why Montreal, Quebec Is The Prog/Tech Capital Of The Western Scene With Long-awaited New Record “Illusive Golden Age” !!

DISC REVIEW “ILLUSIVE GOLDEN AGE”

CYNIC の後には、そして BEYOND CREATION の前には彼らが居た。OBSCURA と共にテクニカルデスメタルのプログレッシブサイドを探求し先導し続けるカナダの SF メタル集団 AUGURY が実に9年振りとなる新作”Illusive Golden Age” をリリースしました!!
“黄金時代” が “幻” ではないことを確かに証明する一枚は、テクデスの燎火を明々と灯す躍動感に満ちています。
カナダが誇るモントリオールとケベックの二大都市は、テクニカルデスメタルのメッカだと言えます。GORGUTS, CRYPTOPSY に端を発するその潮流は、MARTYR, BEYOND CREATION などに引き継がれ、近年の “Stay-Tech” メタルマシーン ARCHSPIRE まで脈々と連なります。
中でも、AUGURY の宿すエモーションと有機的なサウンド、クリエイティビティーはジャンルの無慈悲でメカニカルな特性を超越し、明らかに異彩を放っているのです。
9年の沈黙を破るアルバムオープナー “Illusive Golden Age” は風雲児たるバンドの型破りな一面が存分に示された戦慄。このジャンルの定番であるシンフォニックなイントロダクションや、ファストな音の洪水には脇目も振らず、独特のエスニックなスケールとクリーンギターのアクセント、そしてフレットレスベースの浮遊感が奏でるユニークな三重奏こそ彼らの狼煙。
神秘と孤高のメロディーセンス、空間を残したミッドテンポのリフワークは襲い来るヒステリックで噛みつく牙のボーカルとブラストの狂気を際立たせ、ダーティーに歌うSFの奇妙なワルツへと収束して行きます。失われた文明と知識を探るリスナーの旅は、得体の知れない未知なるエキサイトメントでその幕を開けるのです。
ステレオタイプのテクニカルデスメタルからさらに距離を置いた “Carrion Tide” はバンドの緻密なタクティクスを象徴する楽曲かも知れませんね。メタルリスナーにまるで施しを与えるかの如く付与されたブラッケンドのアグレッションは、AUGURY の持つ個の力によって様々なエモーションへとその形を変えて行きます。
ディープなガテラルからヒステリックなスクリーム、ミドルレンジの雄々しきクリーンまでメタルボーカルのショウケースにも思える Patrick Loisel のワイドな才能は移り行く喜怒哀楽を完璧なまでに表現し、起伏に富んだ楽曲のメインパーソナリティーとして君臨します。
ギタリスト Mathieu Marcotte の DEATH や CYNIC に VOIVOD、さらには OPETH や EMPEROR の遺伝子を受け継ぐ複雑でスリリングなリフの猛攻は、カタストロフィーが眼前に迫るかのような錯覚を引き起こし、ex- BEYOND CREATION の怪物 Dominic “Forest” Lapointe はフレットレスベースの酩酊でサイケデリックな静謐の焼け野原を描くのです。
MESHUGGAH と CYNIC が凌ぎを削る “Mater Dolorosa”、ゲーム音楽の影響を感じさせるサイバーなインストゥルメンタル “Message Sonore” を経て辿り着く、最長8分の “Anchorite” でアルバムはその幕を閉じます。
“Anchorite” とは、抗し難い理由で社会や故郷を離れ一人で暮らす宿命の意。もしかするとそれは、大災害で滅びし失われた文明最後の生き残りだったのかも知れません。焦燥と惜別、そして寂寥感を込めた過去からのメッセージは、メランコリーとアンビエンス、そしてアグレッションが渾然一体となったオデッセイ。
最高のミュージシャンシップで「異なる感覚を持って独自のサウンドを築き上げた」AUGURY の神話は、そうしてさざめく波の音と共に自然の元へと帰って行きました。
今回弊誌ではバンドの中心人物 Mathieu Marcotte にインタビューを行うことが出来ました。「個人的には確かにテクデスを聴いてはいるんだけど、そのスタイルからそんなに多くの影響を受けている訳ではないからね。逆に言えば、そうでなければ同じ様なサウンドになってしまうからね。 」リリースは DARK MATTER SECRET, EQUIPOISE, INFERI 等を抱える超注目株 The Artisan Era から。どうぞ!!

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AUGURY “ILLUSIVE GOLDEN AGE” 9.8/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SLUGDGE : ESOTERIC MALACOLOGY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MATT MOSS OF SLUGDGE !!

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Mollusk-themed Tech Death King, Slugdge Has Just Released Their Most Adventurous, Complex And Progressive Album Yet, “Esoteric Malacology”!!

DISC REVIEW “ESOTERIC MALACOLOGY”

イングランドとスコットランドの稜線より這い出し軟体動物王 SLUGDGE が、カウンターカルチャーとしてのメタルを存分に追求した “深遠なる軟体動物学” “Esoteric Malacology” をリリースしました!!
メタルの狂騒と尊厳を等しく抱きしめ、ドラマ性と知性を高次元で融合させた独創的なレコードは “メタルの進化” を雄弁に物語ります。
「ヘヴィーメタルはアウトサイダーのための音楽さ。君たちが愛していようが嫌悪していようが、カウンターカルチャーとして永遠に存在し続けるんだ。」と Matt が語るように、SLUGDGE のはヘヴィーメタルのジョークにも思える過度なファンタジーや想像力を敢えて前面に押し出しながら、シリアスかつハイクオリティーなサウンドをデザインすることでアウトサイダーとしての矜持を保つ以上の存在感を発揮していると言えるでしょう。
“Esoteric Malacology” も、当然その彼らの流儀に乗っ取って制作されたレコードです。楽曲はバンドのビッグテーマである “カタツムリ” “ナメクジ” その他軟体動物に捧げられ、歌唱やリフの持つ莫大なエネルギーで軟体動物の神々を祝福しています。
そして、ギミックにも思えるその大袈裟で奇想天外な劇画的手法は、例えば CANNIBAL CORPSE がそうであるように、キラーでシリアスな楽曲を伴うことで異端の享楽を宿す巨大なカタルシスを誘うこととなるのです。
GOJIRA の楽曲 “Esoteric Surgery” へのオマージュにも思えるアルバムタイトルは、確かにフランスが生んだ不世出のプログレッシブメタラーへの接近を示唆しています。そして、”The Spectral Burrows” が “The Way Of All Flesh” の息吹を胸いっぱいに吸い込んだ傑出したプログメタルチューンであることは明らかでしょう。
EDGE OF SANITY の “The Spectral Sorrows” を文字ったに違いないドラマティックなエピックは、複雑かつ重厚なテクスチャーがテクニックの荒波に跋扈する濃密な5分50秒。荘厳でしかし闇深きそのアトモスフィアは、聴く者の脳波を直接揺さぶり音の酩酊へと誘います。
比率の増した神秘のクリーンボーカルは絶妙のアクセント。ENSLAVED に備わった全てを洗い流すかのような神々しさとは異なり、混沌も崇高も全てを包括したダークロード “Mollusa” への捧物、破滅的にキャッチーなその調べは、異世界への扉を厳かに開く確かな “鍵” として機能しているようにも思えます。
軟体動物の柔軟性を活かした “Putrid Fairlytale” は SLUGDGE を象徴するプログレッシブデスメタル。NAPALM DEATH の “Lucid Fairytale” をオマージュしたタイトルからは想像もつかない劇的なドラマが繰り広げられています。
ここまで記して来た通り、”Esoteric Malacology” の楽曲タイトルは偉大な先人たちの足跡に対するオマージュとなっています。 “War Squids” は BLACK SABBATH の “War Pigs”、”Slave Goo World” は SEPULTURA の “Slave New World”、”Transilvanian Fungus” は DARKTHRONE の “Transylvanian Hunger” 等。そして “Putrid Fairlytale” にはそういった彼らが愛する様々なジャンルのメタルが触手で繋がり凝縮されているのです。
プログの色合いを帯びた鋭利なリフワークと相対するブラストビート。一方で、粘度の高いミッドテンポのグルーヴと荘厳なるボーカルメロディー。繊細かつ印象的な電光石火のギターシュレッドを極上の味付けに展開する魅惑のテクデスオデッセイは、Matt が語る “ヘヴィネスの秘密” を見事に体現しながらまさにバンドが理想とするメタルを描き出していますね。
スロウでドゥーミー、ロマンチックとさえ言える “Salt Thrower” で塩に溶けゆくナメクジの悲哀を全身で表現した後、アルバムは “Limo Vincit Omnia” でその幕を閉じます。ラテン語で “スライムは全てを征服する” の意を持つエネルギッシュなナンバーは、「メタルが進化し続けるためには影響の外側から新たなアイデアを取得する必要があるように感じるね。」と語る通りエレクトリックなサウンドまで包括し、意義深き実験と学問の成果を誇らしく報告しています。
今回弊誌では、バンドのギター/ボーカル Matt Moss にインタビューを行うことが出来ました。ギタリスト Kev Pearson とのデュオでしたが、インタビュー後に THE BLACK DAHLIA MURDER のドラマー Alan Cassidy と NOVENA の ベースマン Moat Lowe が加わり完璧すぎるラインナップを完成させています。どうぞ!!

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SLUGDGE “ESOTERIC MALACOLOGY” : 9.8/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【INTO THE GREAT DIVIDE : INTO THE GREAT DIVIDE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ZACK ZALON OF INTO THE GREAT DIVIDE !!

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Incredible Multi-instrumental Player, Zack Zalon Creates Pure Prog-metal Epic “Into The Great Divide” With Dream Theater’s Maestro Mike Mangini !!

DISC REVIEW “INTO THE GREAT DIVIDE”

マルチインストゥルメンタリスト、伏竜 Zack Zalon が提唱し、Mike Mangini, Richard Chycki の DREAM THEATER 人脈が入眼へと導いた “ロックノベル” プロジェクト INTO THE GREAT DIVIDE が渾身のデビュー作をリリースしました!!プログメタルのレガシーを存分に咀嚼し忠実に新構築する彼らの純粋なる流儀は、細分化極まるモダンメタルの風土へ却って新鮮な風を運びます。
プログロックの中でも特に RUSH や YES の持つエピカルなメロディー、繊細なテクニック、数学的な変拍子、壮大なオーケストレーションをメタルと融合させたプログメタル。DREAM THEATER, FATES WARNING の二大巨頭を始祖とするジャンルは黎明期から様々にユニークなバンドを多く輩出しています。
SHADOW GALLERY, LIQUID TENSION EXPERIMENT, MAGELLAN, ICE AGE, DALI’S DILEMMA。プログメタル、シュレッドに特化した偉大な Magna Carta, Shrapnel 両レーベルが残した遺産は決して安易に風化させてしまうべきではないはずです。(余談ながら ICE AGE デビュー作のタイトルは奇しくも “The Great Divide”。)
「これは疑いようもなくプログミュージックだよ。自分自身で聴きたいような作品を作ることに決めたんだ。だから、ある意味この作品は僕が聴いて育ったバンドたちへのオマージュの意味も持つわけさ。」 Zack が語るように、INTO THE GREAT DIVIDE は確かにプログメタルの原点とも言えるトラディショナルなポリリズム、クラッシックロックのメロディー、フラッシーなギターとエピックなキーボードに彩られ、無類の遺産を相続するに相応しきヴィジョンを提示しています。
同時により洗練されたデリケートなアレンジメント、ピアノやストリングが生み出す静と動のダイナミックなコントラスト、幻想的でシネマティックなオーケストレーションは 「それでいてフレッシュで異なるものに仕上がっていればと思う。」 というマスターの言葉を裏付けますね。
オープナー、”The Crossing” や冒険へ誘う “A Call to Adventure” はまさにレガシーとコンテンポラリーが交差するグランドライン。Zack がドラムス以外全ての楽器を手がけることで、楽曲のデザインはより密にその完成度を高めます。
冒頭にピアノやギターで示される魅力的な楽曲のテーマが、リズムや音階を少しづつ変えながら優美に展開していく様は実に音楽的で圧巻。鬼才 Brendon Cassidy のオーケストラアレンジメントも呼応し溶け合い、プロジェクトが提唱する小説や映画のようなプログメタルは見事にリスナーの想像力を喚起するのです。
フレッシュと言えば、インストゥルメンタルでありながらアルバムに濃密なストーリーを抱かせる “ロックノベル” のアイデアに触れない訳にはいきませんね。楽曲毎に用意されたイントロダクション、ディープボイスのナレーションは雄弁にして簡潔に逆境に打ち勝つ勝利の道筋を語ります。確かに全曲に解説が付与されたインストルメンタルアルバムは前代未聞で、特に英語をネイティブとするリスナーにとっては画期的なコンセプトでしょう。
Zack の全く弾き控えしないシュレッドも本作の重要なセールスポイントです。Lukather や Huff にリスペクトを捧げる Zack。経過音を豊富に組み込んだリズミックでジャジーなマエストロの滑らかなギター捌きは真に卓越しています。
加えて、折に触れて出現する様々な Shrapnel ロースターをイメージさせる場面、パッセージも好き者には溜まりませんね。Petrucci は元より、Steve Morse や MacAlpine, ロマンチックなフレーズは Neil Zaza、さらには Michael Lee Firkins のカントリーテイストまで垣間見ることが出来るのですからあの時代を愛するリスナーにとっては堪えられない贈り物となるはずです。
“Challenge Accepted” で披露するトライバル&マシナリー、刻刻と移行する拍子の魔法を完全掌握した性格無比なプレイが代弁するように、クリエイティブかつ的確に楽曲を支える手数王の素晴らしさは最早語るまでもないでしょう。
今回弊誌では、Zack Zalon にインタビューを行うことが出来ました。「Mikeはプロジェクトの熱心な支持者として参加し、彼の並外れたスタイルと能力をアルバムにもたらしてくれたんだ。」 どうぞ!!

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INTO THE GREAT DIVIDE “INTO THE GREAT DIVIDE” : 9.7/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【GOOD TIGER : WE WILL ALL BE GONE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DERYA NAGLE OF GOOD TIGER !!

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“Some Kind Of Rock” Super Group, Good Tiger Shows their High-level Talent And Splendid Chemistry With Newest Record, Statement of Evolution “We Will All Be Gone” !!

DISC REVIEW “WE WILL ALL BE GONE”

TesseracT, THE FACELESS, THE SAFETY FIRE。コンテンポラリーなプログレッシブワールドを象徴する三傑から雄飛せし5人の寵児が集結したスーパーバンド GOOD TIGER が、確かな飛躍の証 “We Will All Be Gone” をリリースしました!!ウルトラキャッチーでエモーショナル、ハイパーテクニカルで、しかし素晴らしくコンパクトに設計されたレコードは、精強なる “雄々しき猛虎” の降臨を世界へと知らしめるでしょう。
2015年に “A Head Full Of Moonlight” で月光の下華麗に登壇した GOOD TIGER は、”Some Kind of Rock” “何かしらのロック” を指標し、その出自であるプログレッシブな感覚と共にポストハードコアのエモーションを枢軸としたモダンな多様性を披露し注目を集めて来ました。
PERIPHERY, VEIL OF MAYA, AUGUST BURNS RED, BETWEEN THE BURIED AND ME, DANCE GAVIN DANCE といったシーンを牽引するビッグアクトとのツアー、さらには古豪 Metal Blade Record との契約はその事実を端的に物語っているはずです。
追い風を受けリリースされた3年振りの新作 “We Will All Be Gone” は、そしてその大きな期待に真っ向から応え全ての面でスケールアップを果たした快作に仕上がりました。眩いメロディーは Elliot の透き通る詩情と共に磨き上げられ総天然色の輝きを放ち、侘び寂びを湛えた美しき至高のコードヴォイシング、思考の粋を尽くしたインストルメンタルパッセージを携えてリスナーに37分の “瞬間的な” カタルシスを届けるのです。
同時に、デビュー作に存在した Djent の潮流、プログレッシブの波動はよりナチュラルにまるで “痕跡” のように楽曲へと吸収され、成熟を果たした猛虎の今を伝えます。
あまりにソリッドでフックに満ちたアルバムオープナー “The Devil Thinks I’m Sinking” は進化の象徴です。CHON を想起させる甘やかなコードの響きに、エンジェリックな Elliot のファルセットが溶け合い昇華するアトモスフィアの洪水は、実にモダンなワイドスクリーン。一方、Alex Rüdinger はその広大かつ傑出したアビリティーで、ロックのグルーヴと的確なアクセント、そしてプロギーで複雑なタイム感とフィルインを司り楽曲を見事にドライブへと誘います。
実際、このプリティーで現代的なコードプログレス、クリーンで繊細なプロダクション、幾重にもレイヤーされた有機的なコーラスとギターの饗宴をプログメタルと称することは、時にその “痕跡”が素晴らしき隠し味、グルーヴのストライドとして見え隠れするにしても、些か的外れにも思えます。
むしろ、インタビューで Derya も認めているように、HAIL THE SUN, STOLAS, SIANVAR, そして何より Blue Swan ロースターの首領でもある DANCE GAVIN DANCE といったポストハードコアの文脈で語られるほうが、今作の感情とテクニックの爆発的なモメンタムを示すにはよりシックリとくるのではないでしょうか。
とは言え、バンドが一般的な “ポストハードコア” の狭い枠へと収まらないことも確かです。”Blueshift” や “Cherry Lemon” で提示したエレクトロニカの儚い響きとデジタルビートをフィジカルで再現する試みは楽曲のメランコリーや郷愁を想像以上に際立たせていますし、時には PINEGROVE をさえ思わせるチル感までをも創出し、さらにアルバムを締めくくる “I’ll Finish This Book Later” では Prince を愛する Derya の魂が R&B の風となり Robert Glasper とも共鳴しながら嫋やかに吹き抜けて行くのですから。
「GOOD TIGER は様々な形で理解され楽しんでもらうことが出来るバンドだと確信しているよ。そしておそらく、僕たちは自らをそれ故に “Some Kind Of Rock” “何かしらのロック” と呼んでいるんだと思うな。」 この刹那を喚起する瞬間の美学は、ジャンルもスタイルも飛び越えて”Some Kind of Important” 重要な何かをシーンに突きつけているのかも知れませんね。
Forrester Savell (KARNIVOOL, DEAD LETTER CIRCUS), Adam “Nolly” Getgood (PERIPHERY, AAL) が残した驚異的にクリアーなサウンドプロダクションの妙も付け加えておきましょう。
今回弊誌では、Derya Nagle にインタビューを行うことが出来ました!2度目の登場となります。「ありがたいことに、僕たちはある特定のジャンルに従う必要もないから、とにかく好きなことをやりたいようにやっているだけさ!」 どうぞ!!

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GOOD TIGER “WE WILL ALL BE GONE” : 9.8/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ORPHANED LAND : UNSUNG PROPHETS & DEAD MESSIAHS】JAPAN TOUR 2018 SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH CHEN BALBUS OF ORPHANED LAND !!

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Israel Based Middle-East’s Oriental Metal King, Orphaned Land Shows Their Protest & Anger To “Big Machine” With Their Newest Record “Unsung Prophets & Dead Messiahs” !!

DISC REVIEW “UNSUNG PROPHETS & DEAD MESSIAHS”

オリエンタルメタルの創始者にして、愛と平和の伝道師。イスラエルの至宝 ORPHANED LAND が偏見の鎖を断ち切る最新作 “Unsung Prophets & Dead Messiahs” をリリースしました!!複雑で荘厳、そして何より怒れる正義のアルバムは、世界を支配する全ての権力、不条理に対する強烈なプロテストとなるはずです。
90年代初頭からまさに “孤立した地” イスラエルで生を受けた ORPHANED LAND は、自らの地理的、文化的出自と真っ直ぐに向き合いながら不屈の精神でその活動を続けて来ました。
あのドキュメンタリー映画 “グローバルメタル” で驚愕と共に世界が発見した、西洋を起源とするメタルのフレームに中東のオリエンタルなフレーバーや民族楽器を持ち込む独特の手法は勿論正直で真摯なバンドの象徴だと言えますね。しかし、それ以上にアラビアを起源とするユダヤ、イスラム、キリスト三つの大宗教の融和を願い貫かれるバンドの高潔なるスピリットこそが多くのファンを魅了する理由なのかも知れません。
バンドが掲げるその崇高な理念が結実した傑作 “All is One” から5年のインターバルを経てリリースされた “Unsung Prophets & Dead Messiahs” は、祈りと願いで満たされた前作とは異なりより具体的に人の革新を促すアルバムだと言えるでしょう。
バンドはこれだけ政治、戦争、経済が危機に面する世界で沈黙を貫く世論に疑問を投げかけます。この状況はプラトンの “洞窟の比喩” ではないかと。残念ながら民衆は抜け出す努力を嫌い、暗い日常でも耐え時にはそれにしがみつきます。事実、キリストからガンジー、キング牧師、ケネディ大統領まで世界を救う “預言者”、もしくは “メシア” といった存在の多くは変革を起こす前に暗殺されて “歌い続ける” ことも叶わなかったのですから。
沈黙、停滞への義憤を宿すアルバムは、ギターと民族楽器を操る Yossi Sassi 脱退後初のアルバムともなりました。とは言え、当然 ORPHANED LAND に停滞などは似合いません。
「バンドにメインコンポーザーは存在しないよ。誰もが作曲していて、僕たちは各自のリフを巧妙にマッシュアップしているんだ。さながら大きなジグソーパズルのようにね。」 と Chen が語るように、より奔放で展開の妙を増したエピカルな楽曲群に大黒柱不在の影は感じられませんね。
さらに思索を進めれば、「”All is One” では確かに僕たちは意図的にグロウルを避けていたね。だけど、”Unsung Prophets & Dead Messiahs” では、全ての側面でただ音楽にメッセージを語らせることにしたんだ。」 という言葉に目が止まるはずです。
怒りや嘆きがプログレッシブなデスメタルのムードへと幾分か変換された作風は確かに過去の “Mabool” や “The Never Ending Way of ORwarriOR” を想起させますが、同時にここには未だ前作で開花した祈りのオーケストレーションやシンフォニックなコーラスも華麗に息づいており、結果としてそのキャリアを集約したかのような進化を遂げたと言えるのかも知れませんね。
女性ボーカルと壮麗なストリングスが誘うオープナー “The Cave” はその進化の象徴。極上のエモーションを湛える当代きっての歌い手 Kobi Farhi が時に壮大なクワイアと、時に自らの凶暴なグロウルと繰り広げるコール & レスポンスは、コントラストの魔法、異国のメロディーとシンセサイザーの響きに抱かれオリエンタルメタルを一際尊きメタルオペラの高みへと導きます。
8分間の観劇の一方で、RAMMSTEIN を思わせるダンサブル & キャッチーな “We Do Not Resist” は、エレクトロニカとオーケストレーションの海原を中東の民族楽器がまるでモーゼのように闊歩する異端でしかし印象的な楽曲。コンパクトで強靭なデザインは確かに新機軸。ダイナミックで一切予定調和のない冒頭の2曲でリスナーは自らの “洞窟” から抜け出るはずです。
さらに PORCUPINE TREE や GENESIS, PINK FLOYD の面影を宿すプログレッシブメランコリックな “Chains Fall to Gravity” では Kobi の名唱とレジェンド Steve Hackett の名演を同時に堪能出来る佳曲。まるで演歌のような一期一会の熱唱が生み出す情念は、いつしか Steve の左手へと乗り移りブルースの優しさでリスナーを繋ぐ頑なな鎖を断ち切って行くのです。Jens Bogren のしなやかなサウンドデザインも相変わらずお見事。
BLIND GUARDIAN の Hansi Kursch がトレードマークのメロディーで色香を漂わせるトラディショナルなメタルアンセム “Like Orpheus”、AT THE GATES の Tomas Lindberg が唸りを上げるコンテンポラリーな “Only the Dead Have Seen the End of War” まで ORPHANED LAND はそうやって思想や人種、宗教のみならず音楽の世代やジャンルも繋いでいるのかも知れませんね。
今回弊誌ではギターと木琴、さらにブズーキ、サズ等の民族楽器を扱う Chen Balbus にインタビューを行うことが出来ました! 「影響力は僕たちが望むほど大きくはないんだよ。だけどね、一つくらいは希望が必要でしょ?」 4月の来日も決定しています。どうぞ!!

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ORPHANED LAND “UNSUNG PROPHETS & DEAD MESSIAHS” : 9.8/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【IN VAIN : CURRENTS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JOHNAR HÅLAND OF IN VAIN !!

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Norwegian Progressive Extreme Metal Outfit, In Vain Has Just Released More Polished, More Varied, And More Intelligent Dynamic New Chapter “Currents” !!

DISC REVIEW “CURRENTS”

闇深きノルウェーの森から獰猛なる知性を叫喚する、プログレッシブエクストリームの至宝 IN VAIN がシーンの “潮流” を左右するマイルストーン “Currents” をリリースしました!!神々しきメランコリーと邪悪なブルータリティが融解するその奇跡の眺望は、古の摂理に贖ってリスナーを魂の冒険へと誘います。
IN VAIN にとって、前作 “Ænigma” における Jens Bogren との邂逅は、運命にして僥倖でした。暗騒と調和を司る音響の魔術師との出会いは、バンドに備わる神秘のメロディーや豊潤なコンポジションを一際研ぎ澄まし、多様で濃密なプログレッシブワールドへの扉をしめやかに開いたのです。
鍵盤奏者でクリーンボーカルの Sindre Nedland は “Currents” を “キャッチーでインテンスに満ち、そして普通ではない” レコードだと評しています。実際、バンドは “Ænigma” でついに発見したバンドの個性、対比と実験が生み出す魔法の緊張感を “Currents” で決定的なものへと昇華し、エクストリームメタルの頂きに鋭く光る知性の剣を突き立てたと言えるでしょう。
アルバムオープナー、”Seekers of the Truth” はバンドのルーツであるエクストリームサイドを探求したリフの覇道。ギターチーム Johnar Håland と Kjetil Domaas Petersen の繰り出す魔手は、プログレッシブメタルコアの猟奇性、ブラックメタルの中毒性、メロディックデスメタルの即効性、そして流麗で夢見るようなプログロックのリードプレイを操り、Andreas のスクリームを纏って怪しく疾駆します。
Johnar はアルバムのテーマである “潮流” について 「人々はまさに大陸や国境、さらに世代をも越えて移動しているんだよ。つまり、文化は融合しているんだ。」 と語ってくれました。米国、英国、北欧を股に掛けるワイドな “真実の探求” は、この多様な作品のオープナーに相応しい説得力を誇っていますね。
一方で、”Soul Adventure” はバンドのエセリアルな一面に特化した荘厳の極み。シャープでマスマティカルなリフワークは、ノルウェーに心酔する Matt Heafey のボーカルとも確かにシンクロし、重なり合うコーラスを携えて ENSLAVED にも匹敵する神々しきエピックフィールドを創造しています。
全面参加を果たした LEPROUS のドラマー Baard Kolstad の実力には今さら触れるまでもないでしょうが、それでもコーラスの最中に突如倍テンでブラストをお見舞いする迫真の瞬間には才能の煌めきを感じざるを得ませんね。
極上の対比で幕を開けたアルバムは、”Blood We Shed” では Johanar が近年バンドはブラックからデスメタルへと接近したと語るように OBITUARY の這いずる邪心と賛美歌を悪魔合体へと導き、さらにアルバムの肝であるハモンドが牽引する “En Forgangen Tid (Times of Yore Part II)” では SWALLOW THE SUN の持つドゥームの美意識を70年代のプログ性と溶融しながら対比の頂点 “Origin” まで、劇的なエクストリームミュージックを奏で続けるのです。
アルバムは7分のエピック “Standing on the Ground of Mammoths” でその幕を閉じます。シンセ、ストリングス、ブルーズギター、サックスを組み込み織り成すシネマティックな一大ドラマは、バンドの70年代への憧憬が遂に結実した楽曲なのかも知れません。
溢れ出すノスタルジックなエモーションとシアトリカルなイメージは、時代の “潮流” を飲み込み GENESIS の創造性ともリンクしてバンドを遥かなる高みへと到達させるのです。
今回弊誌では、Johnar Håland にインタビューを行うことが出来ました!初めてリリースされる日本盤には、”And Quiet Flows the Scheldt”, “Ghost Path” 2曲のロングエピックが追加され1時間を超えるランニングタイムでこの傑作をより深く楽しむことが可能です。インタビュー後にも、日本のみんなに僕の日本愛を伝えて欲しいと熱く語ってくれた Johnar の熱意が伝わるようなプレゼントですね。どうぞ!!

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IN VAIN “CURRENTS” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DIABLO SWING ORCHESTRA : PACIFISTICUFFS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DANIEL HÅKANSSON OF DIABLO SWING ORCHESTRA !!

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Hybrid Of Old–style Swing jazz, Classial, and metal. Sweden Based Incredible Octet Diablo Swing Orchestra Has Released More Unique, Unexpected But Ultra-catchy Masterpiece “Pacifisticuffs” !!

DISC REVIEW “PACIFISTICUFFS”

メタルワールドのアウトオブボックス。世界で最もカラフルかつユニークな悪魔の楽団 DIABLO SWING ORCHESTRA が、遂にシーンへとより深く浸透すべき新作 “Pacifisticuffs” をリリースしました!!複雑怪奇とポップを過去最高の滑らかさで融解させた作品には、タイトルに冠した “平和主義” と “殴り合い” の二律背反が見事にフィットしています。
“ポストファーストメタルタイム”。WALTARI の Kärtsy Hatakka が弊誌のインタビューで証言したクラッシックメタルとモダンメタルの偉大なる架け橋に、スウェーデンが果たした役割はあまりにも絶大でした。
MESHUGGAH, OPETH の両巨頭を挙げるまでもなく、90年代初頭から此の地の先鋭は、ベーシックなメタルのデフォルトにプログレッシブの波動、エクストリームな残虐性、フォルクローレの優美、そして複雑なリズムアプローチ等を付加してモダンメタルの礎となる百花繚乱の多様性を創世し続けているのです。
中でも、チェロやホーンセクションを備えた8人組 DIABLO SWING ORCHESTRA のエクレクティックな存在感は飛び抜けて異端だったと言えます。その名が物語る通り、メタル、ジャズ、クラッシックを等しくベースとする狂気を孕んだクロスオーバーの濁流は、アヴァンギャルド、エクスペリメンタルの狭い定義に堰き止められ限定的ながら、間違いなく強烈な印象と影響を残して来たのです。
そして、前作 “Pandora’s Piñata” から5年という長いインターバルを経てリリースしたバンドの最新作 “Pacifisticuffs” は、囚われていたその狭い檻までをも突き破り、より幅広く認知と賞賛を受けるべき作品に仕上がったと言えるでしょう。
オペラティックな歌唱でバンドの顔とも言えた Annlouice Lögdlund が脱退し、新たに Kristin Evegård を迎えたことは、結果として変化の象徴となりました。より普遍的で、しかしアンニュイかつジャジーな魅力と個性を備えた Kristin の伸びやかな歌唱は、バンドのカルトなイメージを一新させるフレッシュな起爆剤だと言えますね。
爽快でキャッチー、そしてあまりに多様なオープナー “Knucklehugs (Arm Yourself with Love)” は楽団の新たなイメージへと誘う招待状。Daniel が 「僕たちはまず、強力なメロディーやリズミックなフックといった楽曲の強固な基盤にフォーカスする傾向があるんだよ。」と語る通り、ポップパンクのコマーシャルな突進力さえ喚起する Kristin と Daniel のデュエットは、メタリックなギターリフ、スウィングするホーンセクション、そしてバンジョーとストリングスを携えたエルヴィスの祝福を一身に受けて、至上なる創造性とフックを提示します。
陽気なブルーグラスから一転、オーケストレーションとホーンをさらに前面に配した感傷的なメタルポルカ “The Age of Vulture Culture” で Kristin の完璧なる融合を証明した後、バンドは “Superhero Jagganath” でトロピカルなレゲエにハワイアン、”Lady Clandestine Chainbreaker” ではフラメンコの邪悪な誘惑にフォーカスし、”Pacifisticuffs” の音楽が世界を巡る旅であると高らかに宣言するのです。
そうして辿り着く “Jigsaw Hastle” は、故郷スウェーデンへの凱旋と言えるのかも知れません。Kristin の透明な哀愁を生かしたウルトラキャッチーなダンスチューンは、同郷の ABBA を彷彿とさせる北欧の煌びやかな風。アートワークのトライアングルから注入された電気の魔法は、きっとこの楽曲のエレクトロニカな要素へと還元されたに違いありません。
Daniel が提唱する “異なるサウンドを独自のものへと昇華する偉大なる自由” は、究極のポップと巡るエクレクティックな世界旅行の果てに遂に完成を見たのかも知れませんね。
今回弊誌では、シンガーでギタリスト、バンドの中心人物 Daniel Håkansson にインタビューを行うことが出来ました。どうやら Daniel のボーカルパートが減った理由も、Kristin の加入による理想のオクテットの完成にある様ですね。「今まで成されてきたことの “外側” について考えなくてはいけないと思うんだ。」どうぞ!!

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DIABLO SWING ORCHESTRA “PACIFISTICUFFS” : 10/10

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